「口が開きにくくて歯科医院を受診できない」「治療中に口を開け続けられるか不安」と悩む方は少なくありません。
開口障害を放置すると、歯科治療だけでなく食事や会話にも支障をきたすことがあります。
原因を適切に診断し、症状に応じた対応を行うことで、歯科治療を受けられる場合があります。

開口障害での歯科治療は可能?
開口障害があっても、症状や治療内容によっては歯科治療を受けられます。
ただし、口が開かない原因によって治療方法や対応が異なるため、まずは診察や検査によって原因を調べることが重要です。
自己判断で受診を先延ばしにすると、原因によっては症状が悪化する可能性があるため、注意が必要です。
開口障害とは口が十分に開かない状態
開口障害は、何らかの原因により口を大きく開けられない状態です。
症状が強い場合は食事や会話に支障が生じるほか、歯科治療でも器具を操作するためのスペースを確保しにくくなります。
症状の程度は軽度から重度まで幅広く、原因によって現れ方も異なります。
口の開きにくさや痛み、腫れなどの症状を確認し、必要に応じて歯科医院を受診することが大切です。
症状に応じて治療方法を工夫できる
開口障害がある場合でも、患者さまの状態に合わせて治療時間や処置方法を調整できることがあります。
たとえば、治療を短時間で区切って複数回に分けたり、開口を補助する器具を使用したりする方法です。
症状の程度や原因を踏まえ、顎への負担に配慮した治療計画を立てます。
受診時には、口の開けにくさや痛みの程度を歯科医師へ伝えてください。
無理に口を開けるのは避けるべき
開口障害は、口を開けることで顎関節や筋肉に負担がかかり、症状を悪化させる恐れがあります。
特に顎関節症が疑われる場合、無理に口を開けると痛みが強くなる可能性があります。
自己判断で開口訓練を行わず、歯科医師や歯科口腔外科医の指導を受けてください。
開口障害の主な原因

開口障害は一つの病気ではなく、さまざまな疾患や外傷によって症状が生じます。
原因を調べることは、必要な治療や対応を検討するうえで重要です。
顎関節症
顎関節症で現われることがある症状の一つが、開口障害です。
顎関節や顎を動かす筋肉の痛みなどにより、口を開けにくくなる場合や、口を開閉した際に関節音が生じることもあります。
歯ぎしりや食いしばりなど、顎関節や筋肉に負担をかける習慣が関与する場合もあります。
親知らずや炎症(智歯周囲炎)
親知らずの周囲に炎症が起こる智歯周囲炎も、開口障害の原因の一つです。
炎症によって歯ぐきや周囲の組織が腫れると、口を開ける際に痛みが生じ、開口が制限されることがあります。
親知らずの一部が歯ぐきに覆われている場合や、清掃しにくい状態では、周囲に炎症が起こることがあります。
痛みや腫れ、口の開けにくさなどの症状が見られる場合は、早めに歯科医院を受診してください。
咀嚼筋の炎症や筋肉の緊張
食べ物を噛むために使う咀嚼筋に、炎症や過度な緊張が生じると、開口障害が起きることがあります。
咀嚼筋への負担は食事に限らず、食いしばりや歯ぎしりなども原因となり得ます。
筋肉に関連する開口障害では、原因に応じて生活習慣の見直しや開口訓練などを検討しましょう。
外傷や顎の骨折
転倒や事故などによる顔面・顎の外傷や骨折も、開口障害の原因となり、骨折の程度によっては、開口が著しく制限されることがあります。
外傷が疑われる場合は、歯科口腔外科や救急医療機関での診察が必要になることもあり、強い痛みや腫れを伴う場合は、早めに受診しましょう。
腫瘍・感染症・全身疾患
頻度は高くありませんが、顎や口腔内の腫瘍、感染症、全身疾患などが開口障害の原因となることもあります。
これらは自己判断での見極めが難しいため、症状が長引く場合や他の症状を伴う場合には、専門的な検査を受けることが大切です。
原因を調べるため、症状に応じて画像検査などが行われる場合があります。
開口障害があると歯科治療で困ること

口が十分に開かないと、治療器具を操作するスペースを確保しにくくなります。
そのため、治療時間や処置方法を調整する場合があります。
虫歯治療が難しくなる
虫歯治療では、患部を削ったり詰め物を装着したりするために、一定の視野と器具を操作するスペースが必要です。
開口障害があると、奥歯の治療において器具が届きにくくなることがあります。
そのため、開口量に応じて、治療時間や使用する器具の調整が必要となるケースも見られます。
親知らずの抜歯が困難になる
親知らずの抜歯では、処置に必要な視野と器具の操作スペースを確保する必要があります。
開口障害があると、抜歯に必要な視野や器具の可動域を確保しにくくなり、症状によっては、抜歯前に開口障害の原因となる治療が必要となることも。
抜歯の難易度や症状によっては、歯科口腔外科への紹介が必要になることも考えられます。
型取りやクリーニングがしにくい
入れ歯や被せ物を作製する際の型取り、歯石除去なども、開口量が十分でないと処置しにくくなる場合があります。
器具の種類や手技を工夫することで対応できる場合もありますが、症状によっては治療の順序を見直すことが必要です。
長時間口を開け続けることが負担になる
開口障害がある方にとって、治療中に長時間口を開け続けること自体が身体的に負担です。
顎関節や筋肉への負荷が蓄積すると、治療後に痛みが増すこともあり、必要に応じて途中で休憩を挟み、顎への負担に配慮しながら治療を進めます。
開口障害がある場合の歯科治療

歯科医院では、患者さまの症状に合わせて負担を軽減しながら治療を進めます。必要に応じて複数回に分けて治療を行うこともあります。
原因を診断してから治療計画を立てる
開口障害への対応では、まず診察や検査によって原因を調べます。
問診や口腔内の診察に加え、必要に応じてレントゲン撮影などを行い、診断結果を踏まえて、症状や開口量に応じた治療計画を立てます。
診断結果に基づき、原因への治療と必要な歯科処置の優先順位を検討することが重要です。
短時間の治療を複数回に分ける
開口障害の程度によっては、一度に長時間の治療を行うことが負担になります。
そのため、一回の治療時間を短くし、複数回に分けて処置する場合があります。
顎への負担に配慮しながら処置を進めるための方法です。
開口補助器具を使用する場合がある
治療中の開口を補助するため、症状や処置内容に応じて補助器具を使用する場合があります。
器具を使用することで、患者さまが自力で口を開け続ける負担を抑えることが期待できるためです。
使用の可否は症状や治療内容によって異なるため、歯科医師の判断のもとで選択されます。
必要に応じて口腔外科と連携する
顎関節の詳しい検査や外傷への処置が必要な場合は、歯科口腔外科などの専門医療機関への受診をご案内することがあります。
必要に応じて原因となる疾患の治療を優先し、その後に必要な歯科処置を行います。
専門的な検査や治療が必要と判断された場合は、適切な医療機関への紹介を受けることが大切です。
開口障害の治療方法

開口障害の治療は原因によって異なります。
歯科治療だけで改善するケースもあれば、薬物療法やリハビリテーションが必要になる場合もあります。
薬物療法
開口障害で痛みや炎症が見られる場合は、症状や原因に応じて消炎鎮痛薬などが処方されることがあります。
薬物療法は症状を緩和する目的で行われ、必要に応じて原因となる疾患への治療も行います。
マウスピース治療(顎関節症)
顎関節症の症状や病態によっては、マウスピースを用いた治療が検討されることがあります。
マウスピースは、顎関節や咀嚼筋への負担を調整する目的で用いられ、使用の可否や装着方法は、診断結果に基づいて歯科医師が判断します。
開口訓練・リハビリ
筋肉の緊張や関節の可動域制限が原因の場合、専門家の指導のもとで開口訓練やリハビリテーションを行うことがあります。
症状や病態に応じて段階的に顎の可動域を広げる方法です。
誤った方法で行うと痛みが強くなる可能性があるため、歯科医師などの指導を受けて実施してください。
原因疾患の治療(親知らず・炎症など)
智歯周囲炎など、炎症性の疾患が原因である場合は、原因となっている歯や組織の治療を行うことで開口障害が改善することがあります。
局所の洗浄や消炎処置を行い、症状に応じて抗菌薬の投与や抜歯を検討します。
手術が必要になるケース
顎の骨折や腫瘍、一部の重度な顎関節疾患などでは、外科的治療が必要になることがあります。
手術の適応は症状や検査結果に基づいて総合的に判断され、専門的な治療が必要な場合は、口腔外科や関連する診療科での対応が求められます。
このような症状は早めに歯科・口腔外科を受診しましょう

一時的な症状で自然に改善する場合もありますが、痛みや口の開けにくさが続く場合は、歯科医院または歯科口腔外科を受診してください。
指2本分も口が開かない
口を開けても縦に指2本程度が入らない場合は、開口量が低下していることも考えられます。
痛みや食事への支障を伴う場合は、早めに歯科医院または歯科口腔外科へ相談してください。
強い痛みや腫れがある
顎や口腔内に強い痛みや腫れがある場合は、炎症や外傷などが関係している可能性があります。
感染症による腫れは周囲へ広がる可能性もあるため、早めに医師の診察を受けましょう。
痛みが持続する場合は、自己判断で市販薬に頼り続けるのではなく、専門的な診察を受けることが大切です。
食事や会話に支障が出ている
開口障害によって食事がとりにくくなったり、会話がしづらくなったりしている場合は、生活の質に影響が出ている状態といえます。
食事や会話への支障が続く場合は、早めに歯科医院または歯科口腔外科へ相談してください。
数日経っても改善しない
一時的な症状であれば自然に改善する場合もあります。
ただし、症状が改善しない場合や徐々に悪化している場合は、治療が必要な疾患が関係している可能性があります。
長引く症状は自己判断せず、専門家の診断を受けることが重要です。
開口障害の歯科治療についてよくある質問

ここでは、開口障害の歯科治療について、よくある質問にお答えします。
口が2cmしか開きません。歯科治療はできますか?
開口量が2cm程度でも、症状や処置内容によっては治療できる場合があります。
ただし、奥歯の処置や親知らずの抜歯など、十分な視野と器具の操作スペースが必要な治療もあります。
まずは歯科医師に相談し、開口障害の原因と治療の可否を確認してください。
開口障害は自然に治りますか?
軽度で一時的な症状であれば、自然に改善する場合もあります。
一方、顎関節症や炎症、外傷などが関係している場合は、検査や治療が必要になることもあります。
症状が続く場合は、自己判断せず医療機関を受診することが大切です。
顎関節症が原因でも虫歯治療は受けられますか?
症状の程度によっては、虫歯治療を受けられる場合があります。
治療時間を短くする、必要に応じて開口補助器具を使用するなど、顎への負担に配慮して治療できる場合があります。
受診時に、痛みや口の開けにくさを歯科医師へ伝えてください。
どの診療科を受診すればよいですか?
開口障害の原因によって適切な診療科は異なります。
歯や歯ぐきの痛み、親知らず周囲の腫れがある場合は、まず歯科医院へ相談してください。
顎関節の強い痛みや外傷、著しい開口障害がある場合は、歯科口腔外科が主な相談先となります。
受診先に迷う場合は、まずかかりつけの歯科医院へ相談し、必要に応じて歯科口腔外科などの紹介を受けてください。
堀田院長の総評|開口障害は原因を調べて適切な歯科治療を受けましょう
開口障害が起きる原因によって必要な治療や対応が異なるため、自己判断で放置せず、症状が続く場合は歯科医院や歯科口腔外科を受診しましょう。
口が開きにくい状態でも、症状や原因に応じて歯科治療を受けられる場合があります。
早めに原因を調べ、適切な対応につなげることが大切です。

この記事を監修した人

歯科ドクターHa 院長 堀田 宏司
皆様へメッセージ
歯科医院という場があなたにとって「当たり前」になるよう、医院の雰囲気に少しでも慣れて欲しい。そして何より、歯科医師やスタッフを「怖くない人たちだ」と理解していただきたい!
略歴
- 鹿児島大学歯学部
- 名古屋大学大学院